研究概要 |
これまでに,千葉県北部において,サシバの生息が確認された谷津の特徴を把握するために,地形と植生に関する既存の数値地理情報を用い,谷津の地形および土地利用の特徴を表現する複数の指標を考案した.用いたデータは,国土地理院刊行の50mメッシュ標高データ(50mDEM: 50m-Digital Elevation Model)および,環境庁自然保護局刊行の自然環境情報GISに含まれる現存植生データである.現存植生データは,第3回から第5回の環境庁自然環境保全基礎調査を集成して作成されたポリゴンデータである.解析単位を統一するため,現存植生データと50mDEMとを同一の50mメッシュサイズに変換して解析に用いた.メッシュデータへの変換においては,各メッシュの中心付近に重なる植生をそのセルの植生として代入した.現存植生図は,樹林地(果樹園,苗圃以外の木本植生),草地(草本植生),畑地(畑地,果樹園,桑畑,茶畑),水田,放棄水田,市街地および造成地,緑の多い市街地,ゴルフ場に再分類した.このうち本研究では水田および樹林地を解析に用いた.解析結果から明らかになった繁殖期のサシバの生息環境は,(1)谷の横断方向に樹林地-水田-樹林地となる土地利用配列,(2)樹林地と水田の隣接長,(3)谷底低地の幅,(4)谷壁斜面の幅,の4点と関係がみられた.サシバの生息の有無を目的変数とした判別分析の結果,(1)谷の横断方向の土地利用配列により,7割以上のサシバの生息環境が推定可能であることが明らかとなった.以上の条件を用い,サシバの生息適地を広域的に推定した.それにより,サシバの潜在的生息地を図化することができた.
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