研究概要 |
本年度の研究成果の概要は以下の通りである。 1.数種野菜実生[果菜類(トマト、メロン、スイカ)、葉茎菜類(アスパラガス)、根菜類(ニンジン)]におけるAM菌5菌種の接種検定を行った結果、大部分の野菜でGigaspora margarita,Glomus fasciculatumの2菌種が高い感染率及び顕著な生育促進効果を示した。このことから、上記2菌種が高い親和性を有すると判断し、次の遊離糖分析実験に供試した。 2.前述の野菜実生へAM菌2菌種を共生させ、植物体内遊離糖(スクロース、グルコース、フラクトース、トレハロース)をHPLCを用いて経時的に分析した。その結果、AM菌感染植物体では地上部及び地下部における総遊離糖含量が大部分の処理区で無接種区より増大し、増大に起因する遊離糖の種類は、野菜の種類、分析部位、AM菌菌種によって異なった。また、土壌中のリン酸濃度を変えて同様の分析を行った結果、リン酸濃度に関わらずAM菌感染植物体で総遊離糖含量が増大する結果が得られた。このことから、AM菌感染による遊離糖の増大現象には、共生による植物体中リン濃度の上昇以外の要因も関与していることが示唆された。一方、一般の野菜では保有されないトレハロースがAM菌感染植物体の地上部及び地下部で検出される場合があった。トレハロースはAM菌を含む微生物等の貯蔵糖であり、感染によって地下部から地上部へトレハロースが移行・蓄積したことが考えられた。トレハロースは機能性糖として近年注目され食品類への添加も試みられていることから、AM菌感染植物体由来の果実等の付加価値化として、トレハロースが寄与する可能性があると考えられた。
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