1.試験区の作成 季節変動、日変化等についての連続的なデータを取得するための試験緑化区を和歌山大学システム工学部B棟に設置した。試験用植栽基盤としては、近年、環境共生を目的に施工される事例の多い、多肉植物類を用いた薄層基盤型の緑化装置を2基、ノシバを用いた薄層基盤型の緑化装置を1基、チガヤを用いた薄層基盤型の緑化装置を1基、蔓性の植物を用いた無基盤型の緑化装置を1基作成した。、また、これら植栽基盤を用いて熱流測定等を行うための模擬スラブ構造体を2基作成し設置した。植栽基盤は屋上において現在、馴化、養生中であり、2002年夏季における本調査に備えている。 2.試験区における熱遮蔽効果の計測 模擬スラブに対する緑化の有無による、熱流およびスラブ面の温度の相違の実測を2001年8月および2002年2月に実施した。植栽が十分に安定していない段階の予備調査であったが、夏季においては顕著な熱流の低減効果が、冬季においても若干の保温効果が確認された。 3.実地調査 屋上緑化が施されている実際の建物を対象に、屋上緑化による遮熱効果の定量的解析を実施した。測定対象としては、都市基盤整備公団技術センター、すまいと環境館(東京都八王子市)、大阪ガス西宮営業所(兵庫県西宮市)、岳南建設工場敷地内のプレハブ実験棟(広島県広島市)の3箇所を選定した。都市公団のすまいと環境館の測定結果から、基盤厚150mmの草本型屋上緑化の遮熱効果は、最大で40mm厚発泡スチロールの8倍に達することが確認された。また、熱流とスラブ面温度差との精密測定により、従来から測定されていた温度データを用いて、高精度に熱流への変換が可能であることが分かり、これら既存データを用いて、通年での建物省エネルギー効果の算定が行えることが明らかになった。
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