研究概要 |
1,カキ'刀根早生'果実に関しては,ヘタにおける水ストレス誘導エチレンの果実軟化への関与を確認すると伴に,水分蒸散緩和による軟化防止法の確立の調査を行った.その結果,個装・箱単位包装に関わらず有孔ポリエチレン包装は軟化防止に有効であることが明らかとなった.さらに,炭酸ガス脱渋期間中の包装は必要ないが,収穫後6時間以上の無包装や脱渋処理後の無包装は軟化抑制効果を損なうことが分かった.また,透湿度を低下させる加工を施した改良段ボール箱の利用によっても軟化は抑えられた.既存の設備・手段を用いた流通試験においても,これらの方法は効果的に果実軟化を抑制したので,今後,流通現場での実用化が期待される. 2,カキ'西条'果実に関しては,炭酸ガス脱渋処理によるエチレン生成の誘導とその果実軟化への関与を確認すると伴に,エチレン生合成関連遺伝子の一つであるACC合成酵素遺伝子の発現様相を調査した.その結果,炭酸ガス脱渋処理後,特にヘタ組織で多量のエチレンが生成されていることが明らかとなった.また,その際のACC合成酵素遺伝子の発現は,成熟型であるDK-ACS1の発現は検出されず,ストレス型のDK-ACS2とDK-ACS3の発現が検出された.このことから,炭酸ガス脱渋処理を行った西条'果実では高炭酸ガスストレスに反応し,特にヘタ組織においてエチレン生合成が誘導されている可能性が考えられた.また,脱渋処理期間中にはDK-ACS2やDK-ACS3の発現は検出されず,脱渋処理後に果実を大気中に戻して数時間後から発現誘導が起こっていた.つまり,大気中への移動による果実内ガス組成の変化がストレス型ACC合成酵素遺伝子の発現誘導に対して何らかの関与をもっていると推察された.
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