研究概要 |
本研究の目的は,アフリカのトウジンビエ栽培地帯で問題となっている雑草型トウジンビエの発生機構と進化的動態を明らかにすること,言い換えれば作物-雑草複合遺伝子プール内での「雑草性遺伝子」のふるまいを明らかにすることである。本年度は,RAPDに基づくバルク分離法によって,遺伝分析に必要な雑草性連鎖マーカーを設定することを目標とした。 現地で収集した雑草型トウジンビエ種子に由来する自殖第1代をビニルハウスで育成し,分離した集団(親が雑草性遺伝子のヘテロ接合体であったことを示す)の全40個,体の葉を採取してDNAを抽出した。雑草型の示標形質は脱粒性であるが,これは優性形質であるため,これによってバルクをつくったのでは作物型連鎖マーカーを得ることができない。そこで,雑草型遺伝子のホモ接合体とヘテロ接合体を区別するため,成熟期に外部形態を測定し主成分分析をおこなった。この結果,第1主成分が雑草性-作物性の程度を示すものと推定されたので,そのスコアの大きいもの・小さいものそれぞれ9個体ずつのDNAでバルクを作成した。約200組の10塩基ランダムプライマーを用いて第一次スクリーニングを,また再現性について第二次スクリーニングを行ない,最終的に,作物型連鎖マーカー1個,雑草型連鎖マーカー2個を得ることができた。 次年度ではまず士記RAPDバンドをクローニング・シーケンシングし,より安定したPCRマーカー(できればSSCPなどの共優性マーカー)を開発する。さまざまな分離集団を育成し,適応度形質を中心に表現型を調査し,またDNAを抽出してこのマーカーの有無を調べ,両者の関係を分析することによって雑草性遺伝子のなりたち・性質を明らかにする予定である。
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