咋年度はトマト黄化えそウイルス(TSWV)のヌクレオキャプシドタンパク(N)遺伝子で形質転換された17系統の形質転換タバコにN遺伝子が組み込まれた組み換えPVX(PVX.N)を接種し、ウイルス抵抗性検定を行った。その結果、17系統中6系統が組み換えPVXに対するウイルス抵抗性を示した。これらの6系統はTSWVに対しても強い抵抗性を示した。また、抵抗性系統の細胞質におけるN遺伝子mRNAの蓄積量が非常に低いレベルに抑制されていたことから、PVX.NやTSWVに対するウイルス抵抗性は転写後抑制型のジーンサイレンシングによって付与されていることが示唆された(以下ジーンサイレンシング系統と呼ぶ)。本年度は、導入遺伝子によって引き起こされたPTGSがmRNAの分解に際して認識している部位を明らかにするために、ジーンサイレンシング系統に様々な長さのN遺伝子断片が組み込まれたPVXベクターを接種し抵抗性検定を行った。その結果、導入遺伝子によって引き起こされたPTGSは主にN遺伝子mRNAの3'末端領域を認識しているが、ウイルス抵抗性には388bp以上の相同領域が必要であることが明らかとなった。っぎに、様々な長さのN遺伝子が組み込まれた組み換えPVXのPTGS誘導能をVIGSおよびRNA-mediated cross-protectionの系を用いて調べた。PVX.NとTSWVを非形質転換体のタバコに同時に接種すると、TSWVはPTGSによる分解を受け、増殖できないことが明らかとなった。N遺伝子の5'末端から3'末端を網羅するさらに短い断片(185-204bp)が組み込まれたPVXとTSWVを同時に接種した場合もTSWVは増殖できなかった。このことは、非常に短い断片長のN遺伝子であってもPTGSを引き起こすことを示している。さらに、5'末端領域と3'末端領域断片のどちらがより効率的にPTGSを引き起こす事ができるかを明らかにするために、N遺伝子を高度に発現している形質転換タバコ(非ジーンサイレンシング系統)に上記組み換えPVXを接種した。その結果、3'末端領域断片が組み込まれたPVXの方が僅かながら早くPTGSを誘導し、N遺伝子mRNAの分解をもたらす事が明らかとなった。
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