本研究は植物のウイルスに対する感染防御機構、RNAサイレンシングの分子機構の解明を目的とする。RNAサイレンシングは二本鎖RNAを形成した塩基配列を特異的に認識して分解することが分かっている。植物ウイルスの多くはRNAウイルスあり複製中間体として二本鎖RNAを形成するので理にかなった認識機構である。本認識機構に関わる宿主遺伝子の探索を目的として、二本鎖RNA特異的アデノシンデアミナーゼ(dsRAD)遺伝子のクローニングを試みた。この遺伝子は動物においてインターフェロン及びウイルス感染により発現が誘導されることが報告されているが、植物でまだ見つかっていない。 そこで申請者はDNAデーターベース上で検索を行ったところ、dsRAD遺伝子をコードする可能性のある塩基配列をシロイヌナズナで見出し、部分的なcDNAを得た。さらに5'および3'RACE法により全長cDNAをクローニングして動物のdsRADと比較したところ、アデノシンデアミナーゼ活性部分はあるが、二本鎖RNAとの結合部分がないことが分かった。動物でも同様のアデノシンデアミナーゼが見つかっており、tRNAを修飾していることが報告されている。従って、本遺伝子はdsRADではなくtRNAに作用するアデノシンデアミナーゼでRNAサイレンシングにおける役割はないものと思われた。シロイヌナズナには他にdsRADの候補は見出せず、dsRADはRNAサイレンシングには関わっていないと思われた。 これを支持する結果が、最近、動物のRNAサイレンシングであるRNAiに関する実験でZamoreらにより報告されている。そこで、植物ウイルスのRNAサイレンシング阻害遺伝子を用いてRNAサイレンシング阻害遺伝子を用いてRNAサイレンシングに関わる宿主遺伝子を探索することにした。 本科学研究費補助金の継続を辞退し、渡米して本研究を鋭意進めているところである。
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