研究概要 |
今年度はまず初めに,RT-PCRによるディファレンシャル・ディスプレー法を用いて単離した,カイコの胚子活性化に関与すると考えられる遣伝子断片(RNA helicase like ; RHL)のさらなる解析を行った。RACE法により取得した現在までの全長約1.6kbpのRHLのORFを解析したところ,既に確認されたNTP結合ドメインやヘリケースモチーフ以外に,DEAD/DEHD box RNA helicase mothife, Serine rich regionや数種のキナーゼによるリン酸化サイトなどが認められた。続いて,休眠・非休眠卵それぞれの産下後0〜60時間でノーザンブロット解析を行ったところ非休眠卵産下直後にRHLの特異的な発現が認められた。更に,リボソーム関連遺伝子を標準にしたRT-PCRにて同様に各ステージの発現解析を行ったところ,非休眠卵では全て,休眠卵では12時間目まで,RHLの特異的な発現が確認された.その結果をもとに休眠卵で浸酸処理を施し胚子を活性化した時のRHLの発現をRT-PCRにて追跡したところ,浸酸処理に伴った発現が確認された.これらの結果は,本遺伝子(遺伝子産物)が胚子の活性化に深く関与している事を強く示唆していた. 一方,ゲノムサザンプロット解析から,RHLはゲノム中にシングルコピーで存在している結果を既に得ているので,Scanning Likage Analysis法によりRHLの連関群検索を行った。その結果,第2連関群に座位する事が明かとなった。 また,機能解析の第一歩として,1.6kbpのRHLをヒスチジンタグ付きのタンパク質発現用ベクターに組み込み大腸菌内での発現を試みた。その結果,目的のタンパク質の発現が認められた。現在,ニッケルキレートカラムにて目的タンパク質を精製し,機能解析のための予備実験を進めている。
|