名古屋大学農学部付属農場堆厩肥(400t ha^<-1> y^<-1>)連用土壌(厩肥区)における青枯病抑制機構について検討した。薬剤耐性変異株を用い土壌環境中での病原菌の動態を追跡したところ、トマト青枯病菌は厩肥区土壌では急速に死滅するばかりでなく、トマト根および茎葉部における増殖も著しく抑制されることがわかった。したがって、厩肥区土壌では根における病原菌の増殖、感染、植物体内への蔓延が抑制される結果、発病が軽減されると推察された。土壌をガンマ線殺菌、あるいはクロロホルム燻蒸すると、土壌中における病原菌の生残が良好となり、ほぼすべての個体が発病するようになった。土壌を60度、30分間熱処理しても病害発生は無処理と比べまったく変化しなかったことから、胞子形成菌などの熱に対してある程度耐性能を有する微生物群が厩肥区土壌におけるトマト青枯病抑止性を担っていることがわかった。また、土壌pHを低下させたり、土壌水分を比較的乾燥気味(最大容水量の35%程度)に維持することにより、植物生育を損なわずに、青枯病を防除することが可能となることが示唆された。これら一連の実験ではトマト青枯病発生程度と土壌における病原菌の生残とがきわめてよく対応しており、病原菌の土壌中における死滅を促進することにより青枯病が軽減されることがわかった。 一方、化学肥料連用土壌に各種堆肥を添加し、有機物施用によるトマト青枯病抑制効果を検討したところ、本農場で使用している厩肥、および鶏糞堆肥を4%添加することでトマト青枯菌を減少させると共に青枯病を顕著に抑制できることがわかった。しかし、その他の有機物(豚糞堆肥、バーク堆肥、コーヒー粕堆肥、青刈り作物)ではそういった抑制効果は認められず、有機物を施用する事では必ずしも青枯病防除にはつながらないことが判明した。
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