本年度は各種ビスマス化合物が土壌環境を汚染した場合の微生物増殖阻害効果の評価を行った。ビスマスは環境中ではカルボキシル基やチオール基を有する化合物により可溶化することが予想される。そこで、アミノ酸の一種であるシステインを用いてビスマスや鉛との錯体を作成し、MPN法により土壌細菌群に対する増殖阻害効果の検討を行った。 この研究に先立ち鉛とビスマスの相対比較を可能とする細菌生育培地の検討を行い、1Lに肉汁エキス(1g)、グルコース(1g)、塩化ナトリウム(0.5g)、硫酸マグネシウム(30mg)、リン酸水素カリウム(0.25g)を含む培地が適当であることを確認した。いずれの土壌においても(黒ボク土、褐色森林土、褐色低地土、砂丘未熟土)、培地中の金属濃度(0-100μM)が増加するにしたがい細菌に対する生育阻害効果は高くなった。しかしながら、その阻害強度はシステイン錯体においては、ビスマスと鉛間で大きな差異は無く同程度の阻害効果であった。両元素とも水に対する溶解度はきわめて低く、環境中に放出される場合は何らかの有機物との錯体化が必要となる。したがって、環境中ではこの有機成分との錯体形成能が環境影響の律速段階になると示唆された。しかしながら、今後はさらに多種類の有機錯体を用いて検証を積み重ねていく必要がある。 鉛とビスマスの糸状菌生育阻害効果の検討を含システイン-鉛、システイン-ビスマス(100μM)-ローズベンガル寒天培地を用いて行った。100μM程度では、鉛-システイン錯体もビスマスーシステイン錯体も生育阻害効果を示さなかった。
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