各種ビスマス化合物の細菌群集に対する増殖阻害効果 ビスマスは環境中では強い加水分解能のため遊離イオンの形態をとることはなく、環境中で溶存態になるためには何らかの錯体を形成することになる。なかでもチオール基(-SH)との親和性が高いことから、今回数種のチオール基を含む化合物を錯体形成のモデル物質としてもちい、土壌細菌群の増殖におけるDose-Responseの検証を行った。その結果、ビスマス-チオール化合物においては、より脂溶性の性質を帯びるに従い、ビスマスの細菌に対する増殖阻害作用は強くなった。その阻害の強度は、メルカプトエタノール(100μM)-ビスマス錯体で最も強く、2.5μM(0.5ppm)のビスマスの存在によりビスマス無添加区の細菌数のおよそ1%まで減少した。 各種形態における鉛-ビスマス間の細菌増殖阻害効果の相対比較 各種鉛化合物(錯体および遊離イオン)の中では遊離のイオンの形態が最も土壌細菌の増殖阻害効果が強く、ついでシステイン錯体が高かった。一方、ビスマスは上記のとおり、脂溶性を帯びるに従い細菌に対する増殖阻害効果が顕著に表れた。また、土壌中の水溶性有機物画分を用いて両金属の錯体を作成し、液体培地中に混和した場合においては、鉛とビスマスの細菌増殖阻害効果は同程度か、もしくは、ビスマスのほうがやや阻害効果が強い結果となった。銀イオンは抗菌効果が強いことで知られているが、同様の環境で細菌増殖阻害効果を検証したところ、鉛、ビスマスの1/10程度の濃度で強い阻害効果を示した。 各種形態における鉛、ビスマス、銀の直接土壌添加の影響 鉛、ビスマス、銀を土壌に直接添加、培養後の土壌微生物群集構造をリン脂質脂肪酸プロファイル法にて検討した結果、微生物バイオマス量の小さな土壌で金属添加の影響を強く受けていた。中でも、遊離の鉛イオンとシステイン-ビスマス錯体の形態で添加した場合に、プロファイルの比較的大きな変動が認められた。
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