1.アルファルファ根粒菌S.melilotiにlacZ融合遺伝子を用いて窒素固定遺伝子nifH、fixN、nifAの発現を解析したところ、それらはrpoH_1変異株でも野生株と同様に微好気条件で誘導されることが示された。他方、アセチレン還元活性の測定により、rpoH_1、変異株によって形成される根粒の窒素固定活性が、野生株による正常な根粒のそれの約1/80の値であることを見い出した。これは、RpoHの共生窒素固定への関与が、窒素固定遺伝子そのものの発現とは別の機能を通じてなされていることを意味する。 2.透過型電子顕微鏡を用いた観察により、rpoH_1変異株のバクテロイドの形態が野生株のそれと異なることを見い出した。バクテロイドの分化過程にRpoHが関与している可能性がある。 3.S.melilotiの8種類のHsp(熱ショックタンパク質)相同遺伝子groE_<1-5>、dnaK、clpA、clpBの転写パターンをRNase protectionによって解析したところ、rpoH_1変異株では熱ショツク処理に伴うgroE_5の発現誘導が消失し、またdnaKとclpBの発現も低下していた。すなわち、これらの遺伝子の発現にRpoHが関与していることを意味するが。一方、遺伝子破壊を試みgroE_5とclpBの変異株を取得できたが、両方とも共生窒素固定に影響は見られなかった。すなわち、RpoH制御下にある共生窒素固定必須遺伝子は別に存在すると言える。 4.ウェスタンブロッティングによって細胞内におけるRpoH_1、RpoH_2タンパク質の量的変動を解析した。その結果両者は異なるパターンを示し、熱ショック処理や単生・共生の変化にかかわらずRpoH_1は構成的に高いレベル存在するのに対し、RpoH_2は検出限界以下のレベルから熱ショックに伴って増加するのを見い出した。
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