本研究では、温室効果ガスN_2Oの排出削減型の画期的な窒素除去システムの開発にむけて(1)F.oxysporumとS.antibioticusの共脱窒メカニズムを分子レベルでの解明と、(2)共脱窒菌の排水処理への有用性を培養工学的手法を用い実験室レベルで検討することを試みる。現在までに複数の共脱窒菌を得ることができたが、その詳細な反応機構は全く不明である。そこで、第一に、もっとも共脱窒能が強いS.antibioticusとF.oxysporumをモデルとしてそれらの共脱窒系構成成分の解析を行った。現在のところ、亜硝酸とアンモニアがどのような反応経路を経て窒素ガスへと変換されるかでさえ不明である。従って、まず亜硝酸とアンモニアの細胞内での反応系路の特定を行い、in vitroでその酵素活性を再構成することを試みたが、未だ、再構成には至っていない。一方、たとえ効率の良い共脱窒菌が得られたとしても、排水処理のような複雑な複合系微生物系でそれらを利用するのは簡単ではない。実際の利用については、固定化菌体を用いた高速度のバイオリアクターによる比較的純粋な菌相による処理システムから、活性汚泥との併用といった複雑な系での利用まで、様々な可能性が考えられる。これらへの利用を想定した上での共脱窒菌の培養特性を調査した。具体的には、F.oxysporumとS.antibioticusの培養特性を種種の培養パラメーターを測定することによって調べる。共脱窒反応には適度な通気条件が必要であること、亜硝酸が良い基質となることおよび、共脱窒に伴うバイオマスの増加することが示唆された。
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