本年度は、新規耐熱性β-ガラクトシダーゼ(A4-βGal)の結晶構造を解明することに成功した。さまざまな条件で結晶化を行い、つくば・高エネルギー加速器研究機構・放射光施設および西播磨・SPring-8においてデータ測定を行い、MAD法により構造を決定した。現在、native構造において分解能1.6ÅでR因子16.9%、ガラクトースを含む複合体構造において分解能2.2ÅでR因子18.4%の構造をそれぞれ得ている。本構造は、グリコシドヒドロラーゼファミリー42としては世界初の立体構造である。 A4-βGalは植木鉢状の3量体構造をとっており、その接触面積は大きく、強い相互作用でお互いが結びついていた。本酵素が産業上有用な酵素である所以であるところの高い耐熱性は、このサブユニット間の相互作用によるものであることが推測された。また、活性部位の形成に、隣のサブユニットの残基が関与しており、活性の発現にも3量体化が必要であることが分かつた。A4-βGalは(α/β)_8バレルフォールドをとっており、4番目と7番目のβストランドのC末端側にそれぞれ活性中心残基が存在していた。活性部位は植木鉢状分子の内壁に単量体あたり1カ所存在していた。活性中心残基では、構造既知の大腸菌βガラクトシダーゼとよく似た立体構造をとっていたが、ガラクトースの認識環境が大幅に変化していることが明らかとなった。また、活性部位がラクトース分子に適応するようなポケット状になるためには、3量体化が必要であることが見て取れた。このように多量体化によりポケット状の活性部位を形成している例はグリコシルヒドロラーゼファミリーの中では初めての例であった。 本研究の成果の一部は、応用糖質科学誌に掲載予定であるが、これは2001年度応用糖質科学会での発表の紀要であるため、現在、英文誌への原著投稿論文を作成中である。
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