1.ユビキノン欠失植物の解析 本年度は、既に単離してあったT-DNA挿入破壊株である、Atppt1変異株の解析を進めた。この遺伝子座にはUQ合成において側鎖イソプレノイドをキノン骨格に転移するために必要なCOQ2遺伝子オーソログ(AtPPT1遺伝子)が存在しているが、これまでにそのホモ個体は単離できていない。そこで、ヘテロ個体の鞘の詳細な観察を行った。その結果、鞘中の約25%の種子が未発達であり、AtPPT1遺伝子が授粉後の胚発生に必要であることが示唆された。また、次世代でのカナマイシン耐性:感受性の分離比が約2:1となることからも、ホモ個体は致死となる、すなわちAtPPT1遺伝子が植物の胚発生に必須であることが示唆された。変異株にAtPPT1遺伝子をさらに導入することで、次世代でのこの致死的な表現型が相補されるかどうかを現在検討中である。 2.シロイヌナズナからのユビキノン合成に関わる遺伝子群の単離と機能解析 本年度は、交付申告書にある未報告の遺伝子単離に先立って、cDNAが既に単離できているAtPPT1遺伝子にコードされるタンパク質の細胞内局在性を観察した。AtPPT1タンパク質のN末端シグナル配列部分をGFPに融合し、CaMV35Sプロモーターにより植物体で発現させた。その結果、AtPPT1タンパク質は観察した全ての組織(根、茎、ロゼット葉、花)においてミトコンドリアに移行していることが明らかとなった。 3.AtPPT1遺伝子高発現植物の解析 上記1で作成したAtPPT1遺伝子の高発現用コンストラクトを用いて、野生株ws株を形質転換し、AtPPT1遺伝子高発現植物を作成した。現在はホモ個体を単離しているところであり、来年度は形質転換体のUQ含量の測定と、抗酸化ストレスへの影響等、生理学的実験に進む予定である。
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