研究概要 |
チオレドキシン核移行機構の解析 出芽酵母を用いてストレス環境下でのチオレドキシンの細胞内局在の変化を野生株および核-細胞質間輸送担体の変異株について解析を行った。チオレドキシンの細胞内局在はTRX1-GFPおよび抗チオレドキシン抗体を用いて観察した。輸送担体Kap104,Kap120,Mtr10,Pse1,Kap114,Pdr6,Los1,Kap123,Msn5,Cse1,Kap95,Xpo1,Nmd5の各変異株について解析を行った。いずれの株においてもストレス条件下で野生株と同様に核への局在が観察され、ストレス条件下でチオレドキシンを核内に輸送する担体は同定されなかった。現在、何らかの核移行タンパク質に付着して運搬されるPiggy bag styleを想定して解析を行っている。 核内レドックスに関する検討 核局在型チオレドキシンペルオキシダーゼであると考えられるDot5に注目し、核内レドックス調節因子としての機能について解析を行った。Dot5欠損株(dot5Δ)におけるYap1活性とその細胞内局在について検討した結果、dot5Δは野生株と同一の挙動を示した。また、Dot5の過剰発現はテロメア領域の遺伝子発現抑制を解除すること(Disruption of Telomeric silencing)が報告されていることから、GAL1プロモーターを用いて過剰発現した場合についても検討した。しかしながら、過剰発現によるYap1活性・局在への影響は観察されなかった。以上の結果から、現時点で核内redox regulatorとしての機能はDot5では観察されなかった。実際にチオレドキシンペルオキシダーゼとして細胞内で機能しているのかはこれまでに確認されていないため、細胞質チオレドキシンペルオキシダーゼ欠損との遺伝的相互作用や、Dot5の局在を細胞質側に変化させた場合の機能的相補性についても解析を行った。
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