トランスフェリンによる共同性アニオンの結合機構を解明するため、オボトランスフェリンのNローブに相当するN半分子(1-332に相当)のWild Typeおよびアニオン結合サイト内の残基(Thr117)の変異体(T117G)の発現を行った。オボトランスフェリンの分泌シグナルおよびN半分子のDNAをpPIC3.5Kプラスミドに挿入し、メタノール資化性酵母(P.pastoris)に導入した後、抗生物質G418により選択を行った。メタノールを含む培地(BMM medium)で培養した結果、WildType、T117G変異体ともに、培地中へ大量に分泌されることがSDS-PAGEおよびWestern Blottingにより明らかになった。培地を透析後、2種類の陰イオン交換カラムクロマトグラフィー(Q-Sepharose FFおよびMono-Q)を用いて精製し、SDS-PAGEで単一のバンドを得た。N末端分析および質量分析の結果、組換えタンパク質は、天然のものと同様にシグナル配列が正しく切断されていること、糖鎖の付加を受けていないことが分かった。遠紫外領域のCDスペクトルは、天然のものとほぼ同じであり、同様の二次構造を保持していることが示唆された。鉄イオンの結合能について、Urea-PAGEにより検討した結果、Wild Typeは、天然のものと同様であった。また、T117G変異体は結合能がやや弱いが、鉄イオンを結合することが明らかになった。
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