本研究は、大きく以下の3つの実験からなる。 1.地衣類の採集、共生菌・藻の分離、共生菌の培養 本研究で材料として使用する予定の6種類の地衣類のうち、Pseudocyphellaria crocata(ニセキンブチゴケ)を剣山周辺(徳島県)での調査で採集した。採集した地衣類から共生菌・藻の分離を試みたが、分離培養を確立できていない。今後も、調査・採集・分離培養を継続する。 2.地衣成分生産株の培養、地衣成分非生産突然変異体の作出 現時点では、まだ培養の初期段階であり、新たな知見は得られていない。 3.地衣成分の代謝に関わる遺伝子群の検索・同定・単離 予備実験として、Cladonia cristatellaを含む3種類の地衣類由来の培養地衣菌からゲノムDNAを抽出し、地衣類の二次代謝に関わっているとされるポリケチド合成酵素(PKS)遺伝子からケトシンターゼ(KS)ドメインを増幅・クローニングし、1種類について塩基配列を決定した。その結果、目的とするKSドメインと高い相同性を示す240アミノ酸をコードしていることが分かった。今後、材料の菌類からPCRによるPKS遺伝子のクローニングを試みる。また、蛍光ディファレンシャルディスプレイ(FDD)用の電気泳動槽および備品として購入した二次元電気泳動装置を用いて、各電気泳動法の条件検討を行った。今後は、二次代謝産物の生産・非生産を指標にして、転写・発現レベルで制御される遺伝子群の検索・同定・単離を試みる。
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