Bacillus circulansのブチロシン生合成系における2-デオキシ-scyllo-イノソース合成酵素20kDaサブユニットの機能解明を目的として、遺伝子(btrC2)の取得を行い、40kDaサブユニットとの同時大量発現系を構築した。両サブユニットは大腸菌における同時発現系でもヘテロ二量体を形成した。40kDaサブユニットを単独で発現させた場合、精製過程で容易に酵素が沈巌してしまうなどの不安定性を示すが、ヘテロ二量体ではこのような不安定性は見られなかった。また40kDaサブユニットはB.circulansから精製した2-デオキシ-scyllo-イノソース合成酵素に比べて高い酵素活性効率を示すが、発現させたヘテロ二量体ではB.circulansの酵素に近い活性を示した。これらのことから20kDaサブユニツトは2-デオキシ-scyllo-イノソース合成酵素の活性発現には直接関与はしないが、酵素全体の安定性や活性調節に寄与していることが示唆された。さらにbtrC2破壊株を構築し、本遺伝子の生理的役割について検討を行った。遺伝子破壊株は野生株に比べて生育が悪くなるが、培地にアンモニウム塩を添加することによって生育は回復した。また本株はブチロシン生合成能を失っていた。このことから本タンパク質がブチロシン生合成のみならず一次代謝にも関与していることが示唆された。 またブチロシン生合成遺伝子クラスター全領域の取得を目指して遺伝子歩行を行った。その結果上流側にL-グルタミン:2-デオキシ-scyllo-イノソースアミノ基転移酵素遺伝子を見いだした。さらに本遺伝子の大腸菌における発現系を構築し、予想された酵素活性を示すことを確認した。
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