研究概要 |
本研究課題について,平成13年度の研究計画に従って実験を行い,以下のような成果を得た. ジベレリン生産小房子嚢菌 Phaeosphaeria sp. L487株の培養菌体から高分子量ゲノムDNA(平均40kb強サイズ)の調製を行った.これをSau3AIで部分消化し,λDASHIIファージベクターに連結してゲノムDNAライブラリを構築することができた(4x10^5pfu/ml). 次に,既知のent-カウレン合成酵素遺伝子(PhCPSKS)からDNAプローブを作製し,約15, 000プラークについて分子交雑によるスクリーニングを行った.その結果4つの陽性クローンを得ることができたので,プライマー歩行法によるDNA解析を行ったところ,PhCPSKS遺伝子を中心に約16kbのDNA領域に5つの翻訳領域(ORF)を明らかにした.その中には,他のジベレリン生産菌Gibberella fujikuroiのジベレリン生合成遺伝子クラスターに見られるent-カウレン酸化酵素およびent-カウレン酸酸化酵素と類似性を有するモノオキシゲナーゼに関するORFが見い出された.このことにより,Phaeosphaeria sp. でもジベレリンの生合成に関与する酵素遺伝子がクラスターを形成していると断定された.さらにPhaeosphaeria sp. のクラスター内には,G. fujikuroiにも見られる機能未知のORFと,同じく機能未知でG. fujikuroiにはないORFの存在もそれぞれ明らかとなった. 一方,ゲノムDNAの情報からジベレリンの生合成酵素をコードする完全長cDNAの取得に向け,RACE法等によるcDNA断片の解読と同時に組換えタンパク質発現用のプラスミド構築を行っている.
|