様々な生理機能を持つことが知られるタウリンは、食品として摂取され小腸上皮細胞に存在するタウリン輸送担体(TAUT)によって吸収される。この小腸上皮TAUTは様々な要因によって制御・調節されることが考えられるが、本研究では特にサイトカイン類によるTAUT制御に注目した。昨年度の結果、ヒト小腸上皮モデル細胞Caco-2ではTNF-αによってTAUT活性、及びTAUTmRNA発現量が増加することを明らかにした。本年度は、さらにTNF-αによるTAUT制御機構について検討をすすめた。 まずTNF-α処理がCaco-2における他のアミノ酸輸送活性に与える影響を検討したところ、ロイシン、リジンなどの輸送活性には影響を与えず、TAUTに特異的であることが示唆された。またTAUTを発現している他の組織由来ヒト培養細胞(肝由来HepG2、腎由来HEK293、単球由来THP-1)でTNF-αによるTAUT活性への影響を検討したところ、Caco-2のような顕著なTAUT活性の亢進はみられず、この制御はある種の組織特異性を有していることが示唆された。次にTNF-αによるTAUT制御にどのような細胞内情報伝達分子が関与しているか各種阻害剤を用いて検討したところ、転写因子NFκBの阻害剤であるPDTCによってTNF-αによるTAUT活性化及びTAUT mRNA発現量の増加が抑制された。またMAP kinaseの一種であるJNKの阻害剤によってもTAUT活性の亢進は抑制され、この制御にはNFκB及びJNKが関与していることが示唆された。さらにヒトTAUTの転写調節機構を解明するため、ヒトTAUTのプロモーター領域のクローニングを試み、5'上流域約1500bpのプロモーター領域の単離に成功した。得られたプロモーター領域の配列を解析した結果、転写因子NFκB及びAP-1のコンセンサス配列の存在が認められた。
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