研究概要 |
小麦粉をタンパク質分解酵素で処理することで作製した低アレルゲン化小麦粉が、アレルギー治療・予防効果を有するか否かについて検討を行った結果、以下のような結果が得られた。 1.小麦アレルギー患者より末梢血リンパ球を分離し、その培養液に低アレルゲン化小麦粉抽出物(hypo)を1mg/ml濃度で添加し、37度で3日間培養した。培養最終日にBrdUを添加し、その取り込みをELISAにて測定した。その結果、hypoの添加により、無添加時に比べBrdUの取り込みが2倍以上になった。このことから、hypoにT細胞エピトープが存在することが明らかとなった。免疫寛容を誘導するためにはT細胞エピトープの存在が必須であるとされているが、この条件をクリアーしていることが初めて実証された。 2.小麦アレルギー患者に低アレルゲン化小麦粉を摂取してもらい、血中IgE値の推移を検討した。その結果、半数以上で摂取により総小麦IgE、塩溶性画分に対するIgE、およびグルテンIgEのいずれもが徐々に低下した。 3.より詳細に治療・予防効果を検証するために、IgE応答性のBrown Norwayラットを用いて検討を行った。ラットにグルテンを腹腔内免疫した後、低アレルゲン化小麦粉あるいは同組成のアミノ酸混合物を2週間与え、さらにグルテンを吸入させることで感作させた。吸入24時間後に血中IgG1,IgG2a,およびIgEレベルをELISAにて測定した。その結果、アミノ酸混合食群と比較して、低アレルゲン化小麦粉群では、いずれのクラスの抗体においても低値を示した。
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