研究概要 |
共役リノール酸(conjugated linoleic acid, CLA)は必須脂肪酸であるリノーノレ酸(9cis,12cis-18:2)の位置および幾何異性体の総称である。これまでにCLAはガン細胞増殖抑制作用、糖尿病抑制効果、抗動脈硬化作用など、健康に良い生理作用があることが示唆されており、注目されている。しかしながら、これまでに実験で用いられたCLAは混合物としての生理作用であり、特定の構造をもつCLAの影響については知られていない。そこで、CLAの主要な脂肪酸である9cis,11cis-18:2あるいは10trans,12cis-18:2がヒト肝由来HepG2細胞のアポリポタンパク質B_<100>(アポB_<100>)分泌と細胞トリグリセリド及びコレステロール合成に及ぼす影響についてリノール酸を比較対照として検討したその結果、リノール酸と比べて10trans, 12cis-18:2は細胞トリグリセリド合成を抑制し、さらにアポB_<100>分泌を低下させた。一方、この影響は9cis, 11cis-18:2では認められなかった。したがって、CLAはその構造の違いによって異なる影響を示すことが明らかになった。 現在は、各CLAのHepG2細胞内への取り込まれ方や細胞内の脂肪酸組成たどを測定中である。また、これまでにCLAはラットなどの脂肪組織重量を減少させることや、糖尿病抑制効果などが知られている。そこで、マウス由来培養脂肪細胞3T3-L1細胞を用いて、9cis,11trans-18:2あるいは10trans,12cis-18:2が脂肪細胞の分化に及ぼう影響や、レジスチンおよびアディポネクチンのmRNA発現に及ぼす影響についても検討している。
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