研究概要 |
本研究では,アカマツ-マツタケ共生系の生理・生態学的特徴を宿主と共生者間の相互作用の観点から解明し,林地へのマツタケ菌の導入技術へ応用することを目的とした。本年度は,まず,無菌播種により得られた外生菌根菌フリーのアカマツ実生苗を用いて,非無菌条件下でのアカマツ-マツタケ共生系の構築を試みた。4種類の培土を用いて,培土の違いが菌根形成に与える影響を調査した結果,いずれの培土においても,接種3ヵ月後までにマツタケ外生菌根の形成が確認された。しかし,いずれの培土を用いた場合も,接種源の菌糸は変色しており,培土中へのマツタケ菌糸の伸長もほとんど観察されなかった。また,マツタケ菌の感染によるアカマツの成長促進効果も認められなかった。一方,比較のために行ったアカハツ菌の接種においては,外生菌根の形成に加えて培土中への菌糸束の伸長が多数認められ,アカマツの成長も促進された。無菌条件下の培養系においては,マツタケ菌接種による宿主植物の成長促進が認められていることから,今後さらにマツタケの菌根およびシロの形成に適した非無菌条件下における培養条件の検討が必要であると考えられた。次に,広島県加計町のアカマツ天然林において,アカマツ成木への接種試験を行った。昨年度の研究において確立した方法を用いて,外生菌根菌フリーの細根を誘導し,その細根に対して実生苗の実験と同様の方法で菌糸体を接種した。その結果,接種5週間後にはマツタケの外生菌根の形成が確認された。さらに接種4ヵ月後においても,マツタケ外生菌根が観察され,外生菌根の周辺には菌糸体の伸長も認められた。また,同様の方法を用いて,アカハツの外生菌根形成にも成功した。以上のことから,本法は,野外のアカマツ成木への有効な外生菌根菌の接種法に成り得るものと考えられた。
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