平成14年度は、高撹乱・高ストレス立地における植物のクローン生長能力を定量的に裏付ける作業として、萌芽性樹木体内の糖濃度分析手法の開発と測定、ルートサッカー型クローナル植物のクローン識別の2つの作業を中心に研究を行った。 樹木体内の糖濃度分析では、資料磨砕・抽出手法についての試験と、定量法についての複数の手法間の比較を行った。磨砕法については、生材の木材組織が堅く柔軟性に富んでいることから、抽出を効率よく行う手法開発に時間をかけた。定量手法については、多糖をアミラーゼで切断する手法とフェノール硫酸法の双方を用いて試験を行ったが、後者の方が低コストで確実に定量出来ることが分かった。フェノール硫酸法を用いて、高撹乱立地のスペシャリストであるタニウツギの体内糖濃度を分析したところ、形成層周辺の糖濃度は地際で最も大きく、個体サイズに伴って増加した。本結果は、平成13年度に得た、撹乱後の萌芽反応の程度は撹乱前の個体サイズと正の相関を持つという結果と調和的であった。 山火事などルートサッカー型クローナル植物(Populus tremula)の撹乱後に大量発生した地上幹をMuPSマーカーによってクローン識別する作業を前年度に引き続き行い、この結果、この植物が山火事撹乱発生前に大量の地下茎を100m四方を超える範囲に張り巡らせ、撹乱後に大量の地上幹を発生させる巧妙な戦略を採ることがクリアに認識された。 これらの成果は、現在執筆中の論文により次年度以降に公開される予定である。
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