研究概要 |
ブタンジオールなどのアルコール性高沸点溶媒(High Boiling Point Solvent,HBS)を用いたパルプ化法の脱リグニン機構を解明するため、フェノール性β-Ο-4型のリグニンモデル化合物、グアヤシルグリセロール-β-グアヤシルエーテル(1)を加熱処理した。160-200℃の範囲で温度を変えて化合物1を1,3-BDOL処理したところ、グアヤコールが最高約50%の収率で生成した。このことから、フェノール性のβ-Ο-4型の構造ではβ-アリルエーテル結合の開裂が主な反応であることが判明した。この反応速度を化合物1の消失速度から考察したところ、この反応は化合物1に対して1次反応で進行することが判明した。各温度の速度定数k x 10^2(min^-1)は0.94(160℃)、1.97(170℃)、3.22(180℃)、9.76(200℃)、活性化エネルギーΕ_aは98.3kJmol^-1であった。また、反応生成物のGC/MS分析から、ヒッバートのケトン類は確認されず、コニフェリルアルコールとα-エーテルの生成が確認された。このことから化合物1のエーテル結合の開裂は加水分解ではなく、キノンメチド中間体を経たホモリティックな開裂であることが示唆された。さらに、GPCによる反応生成物の分析から、2量体以上の重合物のピークが確認された。そこで、化合物1を1,4-ブタンジオールで処理し、反応生成物を詳しく検討したところ、反応中間体のラジカルカップリングによってオリゴマーが生成することが判明した。これらのことから、リグニン中のフェノール性のβ-Ο-4結合は、キノンメチド中間体を経て、ラジカル開裂すると考えられる。
|