本年度の成果は以下の通り。 1.Vibrio halioticoliおよびVibrio spp.による海藻多糖の酢酸発酵 反芻胃内およびシロアリ消化管内微生物が飼料中の多糖類を発酵代謝した結果、酢酸が生じ、宿主のエネルギー源となることが知られている。アワビが摂餌する褐藻類に含有される多糖類(アルギン酸塩、マンニトールおよびラミナラン)を0.1%となるように添加した海水液体培地で、V.halioticoliおよび32菌種のVibrio spp.をそれぞれ培養し、発酵代謝で生じた酢酸の定量を行った。V.halioticoliは、いずれの糖添加培地でも酢酸の産生が認められ、アルギン酸塩添加培地における酢酸産生量は4.62mMで、他の培地のそれより2倍程度高かった。また、供試したVibrio spp.の中で海藻多糖から産生された酢酸量の高い細菌はV.diazotrophicusのみであった。 2.V.halioticoliと他のアワビ養殖環境分離菌株との試験管内競合培養実験 V.halioticoliが、アワビ消化管内で優占菌種となる過程を検討するために、0.5%アルギン酸塩添加海水液体培地による試験管内競合培養実験を試みた。競合相手にアワビ養殖環境分離菌株Vibrio sp.KOW14株およびCytophaga sp.を供試した。なお、両菌株ともアルギン酸分解能を有する。V.halioticoliおよび競合細菌は10^(2)-10^(3)CFU/mlとなるよう10mlの培地に接種し、20℃で静置培養した。アルギン酸塩無添加培地では、7日間の培養期間中、V.halioticoliおよび競合細菌は共存し続けた。これに対し、アルギン酸塩添加培地では、培養3日目からアルギン酸塩の発酵代謝により、培地のpHが低下し、また競合細菌数も著しく減少した。さらに、同時期からV.halioticoliの菌数も減少した。 3.V.halioticoliのGFP標識化 アワビ消化管内細菌群を人為的に変化させた時、V.halioticoli菌群の変動を精査さる手法が必要とされる。そこで、本菌の緑色蛍光タンパク質(GFP)標識化を行い、GFPを発現する標識菌株を得た。
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