本年度の成果は以下の通り。 1.アワビ消化管内細菌叢の抗生物質添加飼料を用いた人工的置換 Vibrio halioticoliは、ペニシリン系、セファロスポリン系、およびクロラムフェニコール(CP)に高い感受性を示した。この中で最小発育阻止濃度の低いベンジルペニシリン(PCG)とCPをそれぞれ0.5-50mg/50gおよび1.5-150mg/50g飼料となるように混合したアワビ配合飼料を1ヶ月間エゾアワビに給餌し、アワビ消化管からのV. halioticoliの除去を試みた。その結果、50mg PCGおよび150mg CP添加飼料給餌区でV. halioticoliの比率は30%から0.04%に減少し、総菌数は10^8cells/9(消化管)から2桁減少した。しかし、生菌数は減少せず10^6CFU/g(消化管)を維持していたが、飼育試験終了時にはPolaribacter sp.が優占し、細菌叢は変化した。次に、アワビ消化管内細菌叢の完全除去を目指し、PCG-CP添加飼料給餌区で残存したPolaribacter sp.に高い感受性を示すセフォタキシム(CTX)を添加したPCG-CP-CTX添加飼料を調製し、飼育試験を試みたが、総菌数および生菌数を著しく減少させる条件を見いだすまでには至らなかった。 2.緑色蛍光タンパク質(GFP)標識V. halioticoliにおけるGFP発現条件の検討 GFP標識V. halioticoli株について細胞単位でのGFP蛍光発現条件の至適化やGFP発現細胞の検出限界時間などを検討した。その結果、GFP発現細胞の比率は培養温度15℃で高く、また、嫌気培養条件(ガスパック法)下においては、好気条件下よりも比率は10%低下するものの、GFP発現細胞は観察された。さらに、15℃-好気条件下でGFPを発現させた細胞は、15-25℃下では滅菌海水中で4日以内までは正確に検出できた。このGFP標識株を用いたトレーサー実験が今後の課題となった。
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