今年度の研究実績の概要は主に以下の4つである。 (1)研究対象である発光魚ヒイラギの共生発光細菌がPhotobacterium leiognathiであることを、16SライボゾーマルDNA塩基配列を解析することにより明らかにした。この結果によりヒイラギ共生菌に特異的な核酸プローブの設計が可能になった。 (2)共生発光細菌がヒイラギから周期的に周囲の海水へ排出されていることを明らかにした。特に明け方から日中にかけて共生菌の排出が著しく、夜間はそれが抑制される傾向があることが判った。この現象は共生菌の感染直後のヒイラギ稚魚においても見られ、共生菌の増殖が宿主の体内リズムによる制御を受けている可能性を強く示唆している。 (3)宿主の世代間で共生細菌が水平伝搬によってへ受け渡されるという『水平伝搬仮説』の検証の一環として、ヒイラギ成魚の糞における共生発光細菌の存在を明らかにし、分離菌が感染能を持つことを確かめた。この結果からヒイラギの発光器官から共生菌が腸内を経て糞として海水中に排出されること、および、その糞由来の共生菌が次世代のヒイラギへ感染する可能性が強く示唆された。 (4)ヒイラギ稚魚への感染試験においてP.leiognathiと違う種類の発光細菌を接種したところ、それらの菌はヒイラギに感染できないことが判った。この結果から、ヒイラギとP.leiognathiの共生関係には厳密な宿主特異性があることが確かめられた。
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