研究概要 |
ヒラメを供試魚として用い,卵発生より飼育を行い,摂餌・遊泳行動および順位制などの社会行動の発達過程を,高焦点デジタルCCDカメラで詳細に観察した。その結果,ヒラメの攻撃性は発育段階が仔魚から稚魚に移行して初めて発現することが明らかになった。仔魚から稚魚の移行期に特異的にΩ(オーム)姿勢と呼ばれる行動が観察された。Ω姿勢はこれまで摂餌行動と認識されていたが,餌料密度を変えた環境で行動観察を実施したところ,餌料の有無にかかわらずに観察された。したがって,Ω姿勢は変態およびヒラメ仔魚の活性と密接に関わる行動であると考えられた。そこで,Ω姿勢を指標行動にさらに詳細な観察を行った。 ヒラメ変態期仔魚の一群の中で変態期に指標行動(Ω姿勢)を特異的に示した個体に,アリザリンコンプレクソンを用いて耳石標識を施した。標識個体をもとの水槽に戻して稚魚期までの長期飼育を行い,飼育期間終了後に稚魚期の指標行動(攻撃行動)を特異的に示した個体を再び取り出し,耳石標識の有無を調べた。その結果,変態期にΩ姿勢をよく示す個体は,稚魚期に成長がよく攻撃性の高くなることが明らかになった。したがって,変態期のΩ姿勢は稚魚期の攻撃性および成長の個体差を予測する指標行動となると考えられた。 以上の成果の一部はFisheries Science誌に受理され,また,第2回栽培漁業国際シンポジウムでもポスターセッションにて公表した。
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