本研究は、赤潮原因藻類の一種、ラフィド藻Heterosigma akashiwoの個体群識別手法の開発並びに赤潮原因藻類の伝播・広域化メカニズムの解明を目的とする。 1.2001年4月と5月にH.akashiwo赤潮の発生が確認された鹿児島湾、有明海より海水を採取し、ロングチューブ法によりK01-Hs株、K01-Hu株(以上鹿児島湾産)、A01-Ha株(有明海産)を分離した。 2.多糖類除去効果を持つ界面活性剤CTABとDNA抽出キットSepaGene(三光純薬)を用い、H.akashiwo分離培養株からゲノムDNAを精製した。ゲノムDNAは十分な断片長、精製度を有し、PCRの鋳型としても機能し得ることが確認された。 3.H.akashiwo分離株よりリボゾーム小サブユニットRNA遺伝子(SSU rDNA)をPCRにて増幅して塩基配列を決定し、分子系統解析に供した。その結果、A01-Ha株を除き、H.akashiwo CCMP452株との近縁性が示された。また、株間で塩基配列に差違が認められず、SSU rDNAの株間識別、個体群識別の指標としての有用性は示されなかった。一方、A01-Ha株は渦鞭毛藻Prorocentrum minimumと近縁であり、2001年7月に有明海で発生したP.minimum赤潮個体群に由来することが示唆された。 4.K95-Ho、K95-Hy、NIES-5、NIES-6の各株に対してゲノム多型解析の一種、任意増幅多型DNA(RAPD)解析を行ったところ、NIES-5株にのみ他の分離株とは異なる特徴的なバンドパターンが認められ、これら4分離株はNIES-5株とそれ以外の株のグループに分類されること、RAPDが本藻個体群の識別に有用であることが明らかとなった。
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