海洋ラン藻Lyngbya majusculaより得られたポリケチド・ペプチド複合化合物antillatoxinについて、天然およびその立体異性体3種の構造をもつ化合物が合成されたので、供与を受け、その生物活性と溶液中の構造を調べた。まず、天然物と一致するスペクトルを与えた合成品の構造が、推定構造と異なっていたので、天然物の構造を最新のNMRのテクニックを用いて、誤りの原因とスペクトル的にも合成品の構造と矛盾しないことを確認した。次に、生物活性を5種の方法、つまり魚毒性、ラット小脳顆粒ニューロンを用いたマイクロフィジオメトリー法およびLDH活性、細胞内カルシウム濃度、neuro2a細胞に対する細胞毒性を調べた。その結果、いずれの場合も非常に高い活性を天然物の構造の化合物のみが示した。次に、NOEおよびカップリング定数の情報をNMRにより得た上で、MM2法によるモデリングにより、4種の立体異性体の溶液中の高次構造を推定した。その結果、天然物は、L型の構造を有しており、極性官能基が分子の表面に位置していることが予想された。さらに、他の異性体との活性の差は、高次構造が顕著に異なるためであることが判った。この結果は現在投稿中である。 次に、北海道沿岸の海洋藻類を採集し、抽出物を調製のうえ、スクリーニングに供した。スクリーニング法としては、抗菌活性と今年度開発した簡便な付着珪藻着生阻害活性を用いた。その結果、得られた活性種のうち、4種について付着珪藻着生阻害活性を指標に活性成分の分離を試み、再現性のある活性画分を得ることができた。
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