研究概要 |
エコバランス国際会議への参加や,オランダCML(ライデン大学環境科学研究センター)との情報交換により,日本の農業関連のLCAが未だに「チャレンジングな分野」であり,今後の発展が必要とされるものの,国内の研究は縮小する傾向にあることが判った. こうした状況のなか,本研究では,農業製品の評価に留まらず,地域農業が環境にもたらす影響を定量的に把握するLCAの評価枠組みの構築をはかり,カスケード型のプロセス・フローと,土地利用の機能単位を採用することがそれを可能にすることを明らかにした.その過程で,工業製品を含む従来のLCAが看過してきた環境問題の移転(プロブレム・シフティング)について,沖永良部島の事例分析を通じてその存在を確認した.また,現在でも直感的・感覚的に決定される環境負荷低減策について,農業地域のLCAを適用し,環境負荷と低減策の実施に伴う費用との関係について考察した.その結果,三春町での事例分析から,環境負荷は減少しないにもかかわらず,多額の費用投入を必要とする策があることが判った. 研究成果に対する研究者および地域の評価は,以下のように要約できる. ・フレームワークはLCAの規格(ISO)にも準拠しうるものであるが,環境負荷低減策の評価に加えて,農業生産活動と流通・消費評価が必要. ・環境負荷を定量化するだけでは,農業者・行政が営農スタイルを変更する・事業(策)を実施するためのインセンティブにはならず,信頼できる費用分析との統合化が不可欠. 環境負荷の推定に関しては,土壌・肥料に関するものが未だ問題があり,加工・流通・営農作業に関するものは比較的容易に可能であることが本研究で判っている.これまでの指摘を踏まえ,負荷の推定方法とその精度を確認し,さらに次年度以降の開発研究費用があれば1年以内に農業地域計画支援LCAのソフトウエア・パッケージを開発できる.
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