研究概要 |
今年度は新潟県白根市をフィールドとしたアンケート調査と営農組合を対象とした実態調査を行った。アンケート調査は白根市全農家を対象に調査票を配布し、1,000枚以上の有効回答を得ることが出来た。アンケート調査結果の分析からは、転作非協力者は自己完結的な稲作兼業農家が多いことが推察されること、彼らが要求する転作助成金の水準は高く稲作自作所得に見合う金額を要求していること、転作非協力者は自ら転作を行う可能性は低いため営農組合等へ委託する以外生産調整が実施される見込みはないことなどが明らかになった。小作料水準も依然として高止まりしているような相対的高米価地帯でかつ稲作兼業農家の自作地面積規模も大きな地域においては、転作助成金を全て地権者に渡したとしても転作団地を造成して、それを一括して営農組合に任せる体制を築くことは難しいと言わざるを得ない。一方、転作地を受託している営農組合のヒアリングからは、冬季に積雪があるため麦を作ることができず大豆だけでは収益がなかなか上がらないこと、大豆も反収変動が激しく経営的に安定させるのは難しいこと、最近転作助成金のうち一部が耕作者の取り分となったがそれだけでは転作の不利性を補い切れないこと、機械の作業能力および労力的にも転作受託規模も現状が手一杯でこれ以上の拡大は難しいこと、転作経営の収益向上には転作地の団地化が不可欠なことなどが明らかとなった。転作地の団地的な提供が求められている地権者および兼業農家と転作を担う営農組合との間の認識の隔たりが大きく、この溝をどのようにして埋めるかが白根市では構造政策と生産調整政策の両方の推進にとって課題となっているということができよう。そのため白根市は農業公社を立ち上げ、農用地利用調整に積極的に乗り出そうとしていた。
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