平成14年度は、前年度と同様、大河川流域の低湿水田地帯において、生産調整政策が担い手経営への農地集積にどのような影響を与えているかという点についての実態調査を行った。主要な調査地は利根川下流域の茨城県河内町である。この実態調査を通じて導き出された結論は、(1)国等が支給する転作助成金に加え、町が単独で転作助成金を上乗せしていることで転作麦作が急速に拡大しており、転作受託による規模拡大を追求する条件が生まれていること、(2)利根川流域は、昨年度調査を行った新潟と比べて米価水準が低いため、担い手農家の間には転作受託による規模拡大を図る動きが広まっていること、(3)特に、一部の営農組合は県単事業で転作用の機械を導入し、転作受託で大きく規模拡大を達成していること、(4)全体として現在の生産調整政策は担い手農家の規模拡大に寄与していると判断できること、の4点である。昨年度の調査と合わせて考えると、生産調整政策が構造政策化されるかどうかは、稲作自作所得、転作受託所得、小作料の3者の水準がどのような関係になっているかによって決まるのであり、河内町のような状況にある水田地帯は、米価低落のもとで増大が見込まれることは確実ということになるだろう。ただし、最大の間題は、現在の助成金水準を維持した生産調整政策が今後とも継続するかどうかにかかっている。このほか、稲作がマイナーな位置しか占めないような茨城県旭村や、集落営農組織の下で団地転作が行われているような滋賀県水口町、兵庫県加西市でも同様の事態を確認することができた。
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