研究概要 |
2001年3月24日15:28,安芸灘を震源(北緯34.1度,東経143.72度,深さ51km)とするマグニチュード6.7の芸予地震が発生した.憂媛県下のため池が被災したため被害調査を行った. ため池の被害は,比較的海に近く,最大水平加速度300gal以上の地域で多くなっている.愛媛県下には約3,300のため池があり,変状のない無被害のため池が大半である.また,決壊するような大きな被害もなかった.堤体の被害は,(1)堤体天端の亀裂・陥没(38カ所),(2)コンクリート構造物(斜樋,底樋,余水吐など,17カ所)のズレや亀裂,(3)法面張ブロックの変状(13カ所),のほぼ3種類に分類できる.また,石積護岸や護岸ブロックが崩壊する被害(11カ所)も見られた. また,老朽ため池の実態を把握するため,「ため池防災データベース」の整理を行い,被災したため池諸元とその度数の関係を統計的手法により検討した.取り上げたため池諸元は,ダムタイプ,地形,表層地質,竣工年度,堤高,堤頂長,上下流法面勾配,天端幅の9項目である. 以上,ため池被害調査結果および「ため池防災データベース」のデータを用い,ニューラルネットワーク支援によるため池危険度評価システムを構築中である.全体の正解率は約80%と高い精度で予測できているが,被災ため池を「被災している」と評価した確率は約50%となった.芸予地震によるため池の被害は全体数に対して少なく,被害の程度も比較的軽微であったため,学習が不充分であったことが考えられる.次年度は,ネットワークの入力項目をより適切なものに改善していくとともに,多くのため池被害をだした歴史地震に適用するなど学習用データの件数を増やし,より信頼性の高いシステムを構築することを考えている.
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