山梨県都留市上大幡地区において、生業活動の変化・自然資源利用の変化・土地利用の変化について全戸調査を終了した。 調査の結果から、生業が戦後の早い段階で雇用労働へと変化していた。また、戦後一貫して雇用労働や機業に加え、養蚕、林業や炭焼等を行うとともに自家消費用の田畑の耕作するといった複合した生業の形態から、雇用労働と自家消費用作物の栽培のみへと、生業の形態が変化し単純化していることが明らかとなった。 マイナーサブシステンスなどの集落周囲の自然資源利用については、戦後、炭焼などの収入を得るためとして、薪拾いや落ち葉拾い、採草、農業資材採集などの生活必需材を得るためとして、山菜採りや花摘みなどといった生活の中の楽しみとして、多様な種類の自然資源利用が行われていたが、先代の死亡や生活様式の変化によって次第に行われなくなった状態が示された。特に近年、これまで継続して行われていた「山菜採り」「キノコ採り」といった自然資源利用が、周囲の山林の荒廃が原因で行われなくなってきている。また、山林の周辺の道路を散歩するという利用形態が近年になって見られはじめたが、山林の中へ行きたいが歩けなくなるまで山林が荒廃している状況を表している。このことは、集落周囲の自然環境の荒廃が、生活の中の楽しみとしての利用までも奪い、住民の生活へ影響を与えていると考えられた。 サル・イノシシが集落へ出現し被害を与えている問題について、土地利用の変化が大きく関与している可能性が示された。特に林縁部に耕作されていた桑畑が、現在放棄された状況や、針葉樹を植林され荒廃した林地となっていることが影響しているものと考えられた。こうした土地利用の変化ついての情報は収集が終了した。また、旧版地図や林班図の収集も完了し、最適なGIS入力方法を検討し、入力作業を行っている段階である。
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