本年度は、水産用機械システムにおける処理対象物としての鮮魚の動力学モデルを構築することを目的として、以下のことを行った。 1)サンプルとしてアジを選択し、その最も顕著な運動として、尾部を把持した時の背側から見た場合の屈曲運動に着目した。 2)この運動を表現するために、2リンク2関節の剛体モデルを採用し、これに基づいた運動方程式を導出した。 3)この運動方程式における物理パラメータを直接測定で求められないものについて、運動計測データから同定する手法を用いた。なお、運動計測には画像計測手法を採用した。同定用運動パターンとしては、魚体の把持部は固定して振り子のように自由振動させたものを用いた。また、同定用アルゴリズムとしては、未知パラメータが運動方程式において線形パラメータであることを利用して、線形方程式における最小二乗法を用いた。 4)本手法により得られたパラメータに基づいて運動シミュレーションを行い、計測データと比較した。その結果、運動軌跡には大きな差異が確認された。これは、運動計測データの誤差、および最小二乗法の評価関数が運動軌跡の残差ではないことが主な原因と考えられる。 5)よって、シミュレーションと計測データの残差に着目したパラメータチューニングを行った。その結果、残差は大きく減少し、同定用に用いた運動パターンについて提案した動力学モデルが妥当であることを確認した。 6)さらに、本モデルを機械システムの制御系設計へ応用するために、制御実験装置の設計製作を行った。
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