研究概要 |
近年,食品の加熱,乾燥,殺菌操作への赤外線利用が注目されているが,農産物などの固体食品の多くは複雑な構造を有する湿潤多孔質物質であり,その赤外域における光学特性の把握はきわめて困難である.そこで本研究では,食品モデルの赤外分光解析とモデル食品の赤外線乾燥実験をおこない,農産物などの食品の赤外線乾燥機構を解明することを目的とした.そして,本年度は以下の成果を得ることができた. (1)食品モデルの赤外分光計測 食品モデルとして,蒸留水を含浸させたメンブランフィルターを用いた.赤外分光スペクトルの取得には,現有のフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用い,近赤外線から遠赤外線領域にわたる測定を行った.アクセサリーとしては,現有のFT-IR用光音響(PAS)検出器,拡散反射アクセサリー,水平ATRアクセサリーを用いた.まず,光音響検出器を用いることにより,食品モデルによる照射エネルギーの吸収量と直接関係のある赤外分光スペクトルを取得することができた.そして,食品モデルの平均空孔径と含浸させた液体との相互作用について検討した. (2)赤外線乾燥の特徴を抽出するための食品モデルの乾燥実験 食品モデルの赤外線乾燥実験と通風乾燥実験をおこなった.実験には,すでに構築済みの乾燥装置を利用した.これらの装置では,乾燥試料の温度分布,重量変化などを自動的に測定,記録することができる.具体的には,上記食品モデルを乾燥試料とし,両乾燥特性を比較することにより赤外線乾燥の特徴を実験的に抽出した.
|