宮古島の夏植えさとうきび畑(9月下旬植付け)において、平成13年10月5目から平成14年2月5日まで熱収支観測を行った。観測項目は、(1)放射量、(2)乾球温度、湿球温度、(3)風向、風速、(4)土壌水分、(5)土壌温度、(6)雨量である。気象観測の他に、植被高とLAIの観測も行った。これらはデータブックとして纏められた。気温と風速の鉛直プロファイルから、大気安定度を考慮した傾度法により顕熱フラックスを算出し、潜熱フラックスは熱収支式の残差により算定した。蒸発散量はほぼ日射量の変化に対応しており、亜熱帯といえども蒸発散量はそれほど大きくないことが分かった。季節を通して、蒸発散量は2mmday^<-1>近辺で推移しており、冬季におけるさとうきび畑からの蒸発散量は比較的少ないことが理解できた。 実蒸発散量を気候条件のみによって決まるポテンシャル蒸発量で除すること(E/Epot)により、さとうきびの生理特性を調べた。日射量の増加に伴いE/Epotは増加した。気温と水蒸気圧に関しては、特に関係は認められなかった。風速との関係は逆相関になっており、風速が大きくなるほど蒸発散量が減少することがわかった。土壌水分との相関はほとんどなく、観測期間中の土壌水分の範囲内ではさとうきびがストレスを受けていないことが示唆された。同様に、LAIとの相関は特には認められなかった。 E/Epotを日射量と風速の関数として表し、日蒸発散量のシミュレーションを行った。観測値と計算値の差の標準偏差は0.56mmday^<-1>であり熱収支観測の誤差の範囲内で推定することができた。今後、さとうきびの夏季の生育期における生理特性がどのような特徴を持つか引き続き観測を行い、検討する必要がある。
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