研究概要 |
L-カルニチンを安全かつ簡便で,できるだけ分析コストを低減して定量するために,アイソトープを使用せず,測定原理が他の方法に広く応用されている Marquis & Fritz(1964)の酵素法をマイクロプレートに適用し,使用する試薬等の液量を少なくして再現性も確認できる条件を検討した。得られた条件は 1)測定液(0.93 mM DTNB, 3.05 mM EDTA, 610 mM トリス塩酸緩衝液(pH 7.5))を 100 μl, 2)L-カルニチン標準溶液(あるいは試料溶液)を 100 μl加えて混合し,37℃で 10 分間インキュベート後に 415 nm で吸光度を測定し, 3)酵素液(0.118 mg/ml カルニチンアセチルトランスフェラーゼ(E.C. 2.3.1.7))を 50 μl 加えて,再びインキュベートして吸光度を測定し,その吸光度の増加分を L-カルニチン量とする。この条件で L-カルニチンが 0〜50 mg/l の範囲で検量線を作成した場合に,誤差も小さく,相関係数も 0.999 と高い数値を示すことが確認できた。次に本法で実際の試料を測定する際に,筋組織から 0.3 M 過塩素酸で抽出して得られた溶液を炭酸カリウムで pH 7-8 になるように中和した溶液を用いる。この試料と同組成の溶媒が検量線に及ぼす影響を確認した。過塩素酸が 0〜1.5 M の濃度である場合にこれを中和した条件下で検量線を作成した。過塩素酸濃度が高いほど,L-カルニチンの吸光度を低下させた。この原因として, SH 基と DTNB 間の反応を阻害しないことまで確認できたが,酵素反応に対する影響は確認できなかった。しかし L-カルニチンが 0-40 mg/l,過塩素酸濃度が 0〜1.5 M の範囲であれば,検量線の直線性は保たれた。従って,分析試料と標準物質であるL-カルニチンが溶解している過塩素酸の濃度を同じにすれば,筋組織中から抽出した酸可溶性画分における遊離カルニチンを定量することは可能であると判断した。
|