研究概要 |
【目的】これまでに、乳業用乳酸菌の生産する菌体外多糖(EPS)の生理活性について追求し、その活性発現にはEPSに導入されたリン酸基の存在が重要であることが判明した。今年度は、乳酸菌の生産する免疫活性を示さない中性多糖の化学的リン酸化を通して、リン酸基の生理活性発現機構の一端を解明することを目的とした。 【方法および結果】菌体外多糖のリン酸化条件について、市販のLeuconostoc mesenteroides subsp. mesenteroidesを用いて検討したところ、リン酸基を導入率することにより、マウス脾臓細胞に対する幼若化活性が誘導され、中でも分子量40,000のリン酸化デキストランにおいて最も高い活性が見られた。このときの条件をもとに、乳業用乳酸菌Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus NCFB2483が生産する菌体外多糖(NPS)に対してリン酸化を行い、マウス脾臓細胞における幼若化活性を測定した。その結果、NPSもリン酸化の導入により幼若化活性が誘導され、リン酸化デキストランよりも高い活性を示した。さらには、これらのリン酸化多糖は、いずれもマウス脾臓およびパイェル板細胞のB細胞や樹状細胞を活性化し、細胞活性化抗原(CD69、CD80、CD86)の発現を増強した。以上のことから、リン酸化多糖を生産する乳酸菌を用いて発酵乳を製造することによって、免疫賦活化作用を有する新しい機能性食品の開発の基礎を築くものと期待される。
|