乳酸菌の生産するリン酸化多糖の生合成系の解明と免疫賦活化ヨーグルトの作出 【目的】これまでに、発酵乳の持つ免疫賦活化(活性化)作用に着目し、乳酸菌が作り出す菌体外多糖(EPS)の有する生理機能について追求した結果、その活性発現にはEPSに導入されたリン酸基の存在が重要であることが判明した。そこで今年度は、昨年度とは異なる方法でEPSにリン酸基を化学的に導入し、免疫賦活化能を評価することにより、生物活性発現機構を解析することを目的とした。 【方法および結果】Leuconostoc mesenteroides subsp. mesenteroides由来デキストラン(平均分子量40kDa)をリン酸緩衝液に懸濁し、凍結乾燥後、80℃〜160℃で加熱することによりリン酸化を行い、陰イオン交換クロマトグラフィーによりリン酸化デキストラン(P-Dx)を調製した。P-Dxの収量およびリン酸基の導入率は、温度上昇にしたがって増加する傾向がみられ、とくに加熱温度が160℃で最も高いリン酸化率(6.0%(w/w))となった。マウス脾臓細胞における幼若化活性を測定したところ、140℃と160℃で調製したP-Dxにおいて、有意な免疫活性が認められた。また、磁気細胞分離システムによりT細胞とB細胞に分離し、同様に幼若化活性を測定した結果、P-DxはB細胞のみを活性化したことから、B細胞マイトジェンであることが判明した。乳酸菌の作り出す安全なデキストランにリン酸基を導入し、免疫活性を持つ新成分P-Dxを化学合成できたことから、今後さらなる生物活性の発現機構を解析することで、免疫賦活化能を有する機能性食品の開発へつながるものと期待される。
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