研究概要 |
これまでにArcがフェロモン刺激や交尾刺激に伴って副嗅球顆粒細胞の樹状突起に大量に発現することを確認している(Neuroscience, 2002)。本年度はArcとフェロモン情報の相関を検討するために1)鋤鼻神経切断という技法を用いフェロモン情報を遮断することによってArcの増加が阻害されるかどうかを検討した、また、2)交尾刺激が副嗅球へ伝達される経路である青班核からのノルアドレナリン線維を6-ハイドロキシドパミンを用い選択的に破壊しArcの増加が阻害されるかどうかを検討した。その結果、鋤鼻神経を切断したラットでは交尾後でも副嗅球顆粒細胞層にArc陽性細胞が全く観察されなかった。一方で遠心性繊維の破壊群ではコントロールに比べてそのArc陽性細胞数が減少したが、鋤鼻神経切断群のように消失することはなかった。これらのことから交尾時にArc遺伝子が活性化されるためには鋤鼻器からのフェロモン情報が必須であることが確認された。またその活性は陰茎刺激、膣刺激に代表される遠心性の情報により強力に加速されることを示している。これらの結果はArc遺伝子に記録されたArcタンパク質が交尾時にそのフェロモン情報によって増加し、副嗅球内でなんらかの記憶機構の一端を担っている可能性を示唆している。 本年度の結果は来年度以降におこなう予定の雌マウスのブルース効果に関する記憶を解析するための貴重な情報となると考えられる。このように平成13年度は当初の研究計画に沿って研究をおこない十分な成果が得られたと考えられる。 平成13年度科学研究費補助金はガラス器具、実験動物、試薬等の消耗品の購入、および国内学術学会での発表のための旅費に充当した。
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