脂肪細胞分化の制御に関わる転写因子C/EBPファミリーおよびPPARγを使い、黒毛和種牛の筋肉および脂肪組織由来の初代培養細胞に対して遺伝子導入を行うことで脂肪細胞分化の誘導を試み、これによりウシC/EBPファミリーおよびPPARγの脂肪細胞分化のおける機能を検討するとともに、筋肉組織内で起こる脂肪細胞分化の制御機構を明らかにすることを目的とした。 今年度は、昨年度作製したウシC/EBPα・β・δおよびPPARγ発現ベクターのうち、C/EBPβ発現ベクターをウシ筋肉組織由来の初代培養細胞に導入し、ウシC/EBPβを恒常的に発現する細胞の樹立を試みた。C/EBPβ発現ベクターをリポソーム法によりウシ初代培養細胞に導入し、抗生物質G418により導入遺伝子がゲノムに組み込まれた細胞を選択し、ウシC/EBPβを恒常的に発現する細胞を樹立した。ウエスタンブロット解析では、樹立した細胞がC/EBPβを発現していることが確認された。この細胞に対し脂肪細胞への分化誘導を行い、Oil-Red Oによる脂肪染色および脂肪細胞のマーカーであるGPDH活性の測定を行ったが、形態的にも生化学的にも脂肪細胞への分化を観察することはできなかった。 C/EBPβはマウス胚由来の脂肪前駆細胞株や線維芽細胞株に対して脂肪細胞分化を誘導することが報告されており、今回の結果はこれらと異なる結果となった。
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