ビタミン様作用因子の一つとして生体で機能するリポ酸が採食または絶食時のブロイラーにおける血漿遊離脂肪酸とケトン体に及ぼす影響について検討した(実験1)。ブロイラーの代謝反応を明確に観察するため、リポ酸をカテーテルから静脈内に直接90分間連続注入し、その30分毎に採血をおこなった。その結果、主に以下の反応が認められた。 1)リポ酸を注入することで血漿遊離脂肪酸は採食状態に関係なく経時的に増加した。 2)ブロイラーを絶食にすると、血漿中のケトン体(βヒドロキシ酪酸)は採食時のニワトリのそれと比べて約7倍にまで増加した。 3)そこへリポ酸を注入したところ、ケトン体濃度は経時的に著しく減少した。また、採食時のニワトリでも同様な代謝反応が確認された。 次に、マイクロダイアリシス法を活用してリポ酸注入に対する脂肪組織の脂肪分解能および血漿遊離脂肪酸とグリセロールの変化を検討した(実験2)。その結果、以下の点が示された。 1)リポ酸注入に伴う血漿遊離脂肪酸の増加は生じたが、マイクロダイアリシス実験によって評価した脂肪組織の脂肪分解能には変化がなかった。 2)また、血漿中のグリセロール濃度を同時に分析したところ、リポ酸注入量を25から50mg/kg/hrに高めると一過性の脂肪分解反応が認められた。 これらの結果をまとめると、実験計画上の仮説どおり、リポ酸にはブロイラーの血漿遊離脂肪酸を増加させる作用とケトン体生成を抑制させる作用があった。しかし、リポ酸が血中遊離脂肪酸を増加させる主な原因には、その投与量依存的な一過性の脂肪分解能の冗進があるものの、むしろ肝臓におけるケトン体生成を含む脂肪酸代謝の低下によるところが大きいものと示唆された。
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