本年度はPACAPのアンタゴニスト(A/PACAP)を側脳室に投与することにより、内因性のPACAPの作用を阻害したモデル動物(ラット)を用いて以下の実験を行った。 1 泌乳ラットにおけるプロラクチン(PRL)分泌調節 泌乳7-8日目のラットを用い、乳子を隔離直後にA/PACAPを側脳室から投与した。A/PACAP投与5時間後に視床下部・正中隆起部、室傍核、視索上核を採取し、組織中の血管作動性腸管ペプチド(VIP)およびバソプレッシン含有量をRIA法にて測定した。これまでの研究から内因性のPACAPはPRL放出因子を介してPRL分泌調節に関与することが示唆されており、本実験ではPRL放出因子としてのVIPおよびバソプレッシンについて検討した。 その結果、A/PACAP投与群では正中隆起部においてVIP、バソプレッシンともに含有量が低下していた。一方、室傍核および視索上核ではA/PACAP投与による影響は認められなかった。 2 拘束ストレス負荷に対するACTH分泌反応 成熟雄ラットを用い、側脳室からA/PACAPを投与5時間後に拘束ストレスを負荷し、ACTH分泌反応について検討した。また、A/PACAP投与5時間後の視床下部中のバソプレッシン含有量をRIA法にて測定した。その結果、A/PACAP投与群では拘束ストレスに対するACTH分泌反応が低下し、正中隆起部においてバソプレッシン含有量が低下した。 以上の結果から内因性のPACAPは視床下部内で神経伝達因子・調節因子として働き、PRL放出因子を介してPRL分泌調節を、少なくとも一部はパソプレッシンを介してACTH分泌調節を行っていることが示唆された。
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