研究概要 |
高磁場・高速MRIを用いた「生体機能MRI」を実現するための準備および実験を行った。 1,マロン酸誘導脳虚血モデルにおける脳浮腫の拡散を防護する抗酸化剤の効果の可視化 マロン酸誘導脳虚血はミトコンドリア呼吸鎖の複合体の可逆的阻害を示し、神経細胞を死に至らしめ、虚血性梗塞領域を簡便に作成することができる。この梗塞周辺領域は血流の低下が起こり、酸素・エネルギー不足が発生し浮腫を発生させる。マロン酸を前脳部に投与すると24時間で尾状角全域に広がる浮腫が発生する。この浮腫の広がりと抗酸化剤PBNの防護効果を経時的な非侵襲観察を試みた。特に拡散強調画像を適用することで、T2強調像では観察されない周辺組織への影響について検討を行い、病理学的検査と比較を行った。その結果、マロン酸誘導脳梗塞巣がT2強調像と拡散強調画像の両方で確認されたが、梗塞発生自体に対するPBNの防護効果はin vivoでは観察出来ないことが判った。しかしながら、梗塞周辺への影響、浮腫の広がりをPBNの抑制効果を画像化することに成功した。梗塞を取り囲む領域において正常よりも拡散性が小さい、水成分の貯留を示す浮腫領域が観察された。この拡散性の小さい浮腫領域はPBN投与群では小さいことが判った。また、その浮腫領域の外側に脳室での拡散性とほぼ同じ拡散性を示し、T2強調像では観察されなかった異常な水成分の移動領域があることが判った。この領域はPBN投与群では全く見られない変化であった。病理学的検査ではマロン酸誘導脳梗塞巣は凝固壊死巣を形成し、その周囲は海綿状変性を起こしており、拡散性が小さい浮腫領域と一致していた。これらを取り囲むようなグリア細胞の反応像が観察された。特にT2WIでは検出されず、脳室と同じ拡散性を示した領域では拡張した静脈が観察され、この現象がADCの増加に反映されていると考えられた。このことは脳梗塞の発生はその部位だけにとどまらず、周辺領域へ浮腫が広がり脳機能を低下させることが判った。そして、PBNはこれら浮腫の広がりを抑えていることが非侵襲的に画像化でき、脳機能の防護の可視化が行えた。 2,脳の酸素消費と附活領域の可視化を行うためのBOLD画像の作成 「生体機能MRI」を実践するためにBlood Oxygen Level Depend画像をラット脳で行い、これが成功し、fMRIの作成を行っている。
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