ネコ免疫不全ウイルス(FIV)は、ネコに免疫不全を誘導し、獣医臨床上の大きな問題となっている。FIVとネコの系はヒトのエイズの動物モデルとしても重要である。本研究は抗体ファージディスプレイ法を応用した新しいアプローチで、FIVのレセプター(群)を同定・解析することを目的とする。本年度の研究成果は以下の通りである。 1)代表的なFIV分離株のうち、宿主域の異なるPetaluma株、TM2株およびKYO-1株の外被糖蛋白(Env SU)の発現プラスミドを作製し、アフリカミドリザルの腎由来のCOS-7細胞やネコの腎由来のAH927細胞にトランスフェクトし、Env蛋白の発現に成功した。2)FIVの感染を容易に検出できるように、FIVのシュードタイプアッセイ系を確立した。マウス白血病ウイルス(MuLV)のコアを発現するパッケージング細胞に、MuLVのプロモーターで発現が制御されるLacZやGFP(蛍光色素の一種)遺伝子の発現プラスミドをトランスフェクトし、安定形質転換細胞を得た。これに上記の3株のFIV分離株のEnv発現プラスミドをトランスフェクトして、FIVのEnv蛋白に包まれ、MuLVのコアを持つシュードタイプウイルス(感染するとLacZやGFPを発現する)を作製した。3)FIVのレセプターを発現するCRFK細胞やMYA-1細胞からmRNAを抽出後、cDNAを合成し、それをレトロウイルスベクター(pMX)に導入した。このpMXに導入したcDNAライブラリーを、Ecotropic-MuLVのパッケージング細胞であるPlat-E細胞にFugene6でトランスフェクトすることにより、CRFK細胞とMYA-1細胞由来のcDNAを発現するレトロウイルスライブラリーを作出した。来年度は、ファージディスプレイ法により抗体を得るとともに、このレトロウイルスライブラリーからのレセプター分子のクローニングを行う予定である。
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