本年度の研究では、成長期において虚弱で下痢を発症する黒毛和種子牛のT細胞サブポピュレーションのうち、特にγδT細胞を中心とした表面抗原の解析と刺激活性を経時的に観察し、細胞性免疫反応について検討した。 供試牛は黒毛和種子牛、10頭で出生後虚弱で下痢を発症し、獣医治療を必要とした虚弱子牛5頭と健康に成長した子牛5頭とした。供試子牛の末梢血を採血し、出生3日以内を0、出生2週後を0.5週とし、出生1ヶ月ならびに2ヶ月後を観察した。採血した血液は直接標識して白血球ポピュレーションの解析に用いるとともに、マイトジェンを添加して刺激培養し、Tリンパ球の刺激活性を各々フローサイトメトリーによって解析した。 虚弱子牛の0週におけ末梢血中CD3^+CD45^-T細胞は健康子牛に比べ高い傾向にあり、CD3^+CD45^+T細胞は低い傾向にあった。また虚弱子牛のWC^+CD45^+T細胞は健康子牛に比べ観察期間中、低値を示した。一方、リンパ球の刺激活性において、虚弱子牛と健康子牛のCD25^+CD4^+T細胞の変化には明らかな差は認められなかったが、0週における虚弱子牛のCD25^+WC^+T細胞は健康子牛に比べ低値を示した。 本研究の結果、一般に成熟リンパ球に認められる白血球表面抗原CD45が健康子牛に比べ虚弱黒毛和種子牛のT細胞に少なかったことから、虚弱な子牛は健康な子牛に比べT細胞がしていないことが示唆された。またinterleukin(IL)-2レセプターでT細胞の活性化マーカーであるCD25が虚弱子牛のWC^+T細胞において低値を示したことから、γδT細胞の反応性も低下していることが示された。以上のことから黒毛和種子牛において出生後下痢を発症するような虚弱な子牛ではγδT細胞を中心とした細胞性免疫機能の低下があることが示唆された。
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